ご葬儀は誰にでも訪れる人生最大の仏縁による儀式です。
葬儀は「亡き人を送り出す」「弔う」という他人事の儀礼ではありません。亡くなった方のご縁を中心にして、遺族が故人との今迄のご縁に感謝して、故人に思いを募らせ、故人が結んでくれた仏との縁、仏のみ教えに出遭い本当の自分を知る尊い機縁なのです。
故人を偲び、読経念仏して、仏と向き合い、自分を知らされる過程を経て、悲しい出来事が再生の道となり、生きる道が明らかに成る。
私たちは、日常的にテレビを見る感覚で他人を観察し、自分と他人を比べて優越感と劣等感に左右されながら、自分の立つ本来の位置を見失ってしまいます。人の死も他人事であり、身近な人の死によって初めて、自分の死を意識し、今自分が死んだらどうなるのだろうと想像力をはたらかせます。そして、故人がお浄土から、あたふたしている自分を見て、どんな風に思うのか、故人から私に掛けられた願いはなんだろうと、非日常的な感情や気持ちが自然と湧いてくるのです。この想像力こそが仏のはたらきであり、自分の立脚地が定まり、非日常的な人生最大の学びの場となるのが葬儀です。
日常的に済まされていた他人事から「主体性を持つ私事」に顛倒(てんどう)することこそが葬儀の意義であり、この仏縁を生かしてほしい、この死を通して人間として成長してほしいと願われているのが、亡くなった人、つまり仏様に成ります。